【エンジニアの日常】エンジニア達の人生を変えた一冊 Part5

こんにちは。CTO室データソリューションチームの開です。

この記事は「エンジニア達の人生を変えた一冊」として、弊社エンジニア達の人生を変えた本を紹介していきます。エンジニアとしてのキャリアや技術的な視点に大きな影響を与えた一冊とは?それぞれの思い入れのある本から、技術への向き合い方や成長の軌跡が垣間見えるかもしれません。

今回は私・開と、松村さん、田頭さんの3名のエンジニアが、人生を変えた一冊を紹介します。 まず私から、データエンジニアとしてのアイデンティティを確立させた一冊を紹介させていただきます。データ基盤構築の世界に深く足を踏み入れるきっかけとなった実践的な書籍です。

■ 開功昂 / データエンジニア ■ CTO 室データソリューションチームでデータエンジニアをやっている開です。

実践的データ基盤への処方箋〜 ビジネス価値創出のためのデータ・システム・ヒトのノウハウ

私が紹介する「実践的データ基盤への処方箋」は、データ基盤構築のためのノウハウが詰まった書籍です。

この本を読んだきっかけ

この本が出た2021年ごろ、プロダクトのバックエンドエンジニアとして働くかたわら、データ分析基盤やETLパイプラインの開発を業務で取り組んでいました。データ分析基盤構築のベストプラクティスやビジネスの価値につなげるためのアクション、世の中のデータ基盤プロジェクトの事例をキャッチアップするためにこの本を読みました。

本の内容

本は三部構成となっています。一部と二部で一般的なデータ基盤を満たすための構成要素やデータ基盤システムの作り方や望ましい構成について知ることができます。三部は「データ基盤を支える組織」と題してデータ基盤のプロジェクトの進め方や運用、管理方法について具体的なシチュエーションを交えながら学ぶことができます。

この本から影響を受けた点/学んだ点

一般的なデータ基盤の構成要素や登場人物について学ぶことができました。またデータレイク、データウェアハウス、データマートの三層構造やETL、データスチュワートなどの専門用語を改めておさらいでき、曖昧だった理解を深めることができました。

個人的な思い出として、この本を読んで僕がこれまでやっていた業務の内容が "データエンジニア" に近しいことがわかり、自分のことをデータエンジニアと名乗るようになりました。

特に印象に残った部分

三部の「データ基盤を支える組織」は特に勉強になることが多いです。組織デザインの部分では、事業や規模、時期に応じてアサインの仕方やチーム構成を変える考え方は、今の仕事にも取り入れています。直近アーキテクチャの見直しをチームで議論していたのですが、実現したい形とそれに応じたチームのあり方まで議論できたのはこの本のおかげだと感じています。

また、技術の話だけでなく、チェンジマネジメントやステークホルダーとのコミュニケーションについて記載されているところが印象的です。データ活用を浸透させようとした際に生まれる軋轢に対して経営層を巻き込みながら進めるという考え方は、これまでの経験から痛感しており、使えるデータ基盤を目指してアピールしていければと改めて思いました。

このような方におすすめ

データ基盤プロジェクトを始めようとしている型やデータアナリストやデータエンジニアになりたい人、データ人材と一緒に仕事をする人にはぜひ手にとって読んでいただけると嬉しいです。

また僕と同じように4,5年データエンジニアを経験してきた人も読み直してみると新しい発見があるのでおすすめです。

宣伝

この本の著者であるゆずたそさんが、11月6日に開催のData Engineering Summitで登壇されます。「Data Engineering Guide 2025」と題してより現代に沿ったデータエンジニアリングついて話していただく予定です。こちらもよかったら参加していただけると幸いです。

data-engineering-summit.findy-tools.io

次は、キャリアプロダクト開発部でマネージャーを務める松村さんです。松村さんが選んだ一冊は、Rubyの「黒魔術」とも呼ばれるメタプログラミングの世界へと誘う書籍。この本との出会いが、gemのコードリーディングへの抵抗をなくし、さらにはgemの開発にまで発展したそうです。

■ 松村さん / バックエンドエンジニア・マネージャー ■ キャリアプロダクト開発部 転職開発チームで主にバックエンドの開発をしているマネージャーの松村(@shakemurasan)です。

メタプログラミングRuby

私が紹介する「メタプログラミングRuby」は、タイトルの通りにRubyのメタプログラミングの概念や挙動について解説している書籍です。

この本を読んだきっかけ

当時勤めていた会社で、いくつか推奨書籍的なものがあったのですが、その中の一冊でした。
その時の上司から

「メタプログラミングがわからないと、gemの中身やRailsの挙動は理解できないから松村くんも読んでみるといいよ! 後、黒魔術っぽくて面白いよ!」

的なことを言われて「黒魔術???」となったのを覚えています。
当時は「何がなんだかわからんが動いているのでヨシ!」の精神でgemを使っていたので、良い機会だから読もうかなとなったのがキッカケです。

本の内容

本書は、Ruby における「メタプログラミング」、つまり「プログラムがプログラムを記述・改変する」技術を丁寧に解説しています。

前半(第Ⅰ部)は、オブジェクトモデル、動的メソッド定義、ブロック/クロージャ、特異メソッド、コードを生成・評価する手法など、Ruby が持つ "魔術" 的な仕組みを順を追って解説しています。

後半(第Ⅱ部)では、実践として Ruby on Rails におけるメタプログラミングの事例(例:ActiveRecordの設計、ActiveSupportのConcernなど)を通じて手法の応用方法を紹介しています。

総じて、現実的なコードを読み解きながら「なぜそのように設計されているか」を理解できるようになっており、単なる言語機能の説明にとどまらず、Rubyという言語自体の設計思想にも踏み込んでいます。

後、角先生の翻訳本全般に言えることなのですが、原書のテイストを残したまま日本語としてもわかりやすく書かれていて、単純に読んでいて面白いです。

この本から影響を受けた点/学んだ点

とにかくRubyのコードを読んで、挙動を頭の中でシミュレーションするのが楽しくなりました。

「今どのクラスをさわっていて、そこにprependでこのモジュールを貼り付けてメソッドが生えたから〜」というのがクラス図として脳内でムクムク描かれていく。
そして頭がパンクして、実際にコンソールでancestorsを叩いてみて、フムフムこのクラスの継承木はそうなっているのかとまた解き明かしての繰り返し。

実践的なところで言うと、gemのコードリーディングをするのに抵抗がなくなりました。ライブラリのバージョンアップが来ても、コード差分を読み込むことで、自信をもってバージョンを上げられるようになります。

また、最終的に「メタプログラミングを実践してみたい!」という気持ちと、当時所属していた開発組織の課題が相まって、メタプログラミングを駆使してgemを作成してリリースしました。ファインディを受ける時も、この話題で現VPoE神谷とは盛り上がりました。

特に印象に残った部分

全部です!

と言いたいところなのですが、第3章「動的メソッド定義と特異メソッド」はメタプログラミングを支える柱と言っていいかもしれません。

3章ではメタプログラミングの核心部分である define_methodmethod_missing、特異クラス(シングルトンクラス)を使った動的振る舞いの定義方法を具体例とともに学べます。 普段のRubyプログラミングではなかなか意識しない「オブジェクトのクラスやメソッド構造を動的に変えられる」仕組みを体感できます。

2章あたりまでで心が折れて積ん読になっている方は、是非3章までは読んでみることをオススメします!

このような方におすすめ

Rubyを用いて定常的な開発・保守業務ができるようになった後、次のステップとしてディープダイブしたい方は読まれることをオススメします。

また、実行時まで挙動がわからないメタプログラミングはまだまだ生成AIが弱い領域だと思っていて、今の時代だからこそRubyエンジニアとして一皮剥けるために良い書籍だと思います。

最後は、同じくCTO室データソリューションチームの田頭さんです。田頭さんが選んだのは、第三次AIブームの到来を予見した先見性のある一冊。生物専攻からデータエンジニアへの転身を決意させた、AIの可能性を感じる一冊です。

■ 田頭啓介さん / データエンジニア ■ CTO室データソリューションチームの田頭です。

人工知能は人間を超えるか
ディープラーニングの先にあるもの

私が紹介する「人工知能は人間を超えるか」は、第3次AIブームまでに至るまでの人工知能の進化についてまとめられた書籍です。

この本を読んだきっかけ

この本を読んだのは大学2年生の時です。当時生物専攻だったのですが、たまたま遺伝子解析でデータ分析や機械学習に触れる機会があり、人工知能について概観を知っておくために読みました。

本の内容

この本は、人工知能について一般読者向けに解説した入門書です。ディープラーニングに端をひらく第三次AIブームまでの歴史を振り返りながら、専門家と一般の人々の間にある人工知能への認識のズレを明らかにし、この先どのように生きていくべきかを考察しています。

この本から影響を受けた点/学んだ点

この本でデータやAIの可能性に強く惹かれたことで機械学習エンジニアを目指すようになり、現在のデータエンジニアとしてのキャリアに繋がりました。

特に印象に残った部分

改めて読み直したのですが、終章の「変わりゆく世界」が特に印象に残りました。実際に生成AIによって世の中が激変していく中、10年前の段階でここまでAIが発展している未来を予測できているのはすごいと感じました。

このような方におすすめ

AIへの基礎的な知識を身に付けたい人におすすめです。

2015年出版当時から10年が経っていますが、AI活用が加速し、「人工知能」という言葉が溢れている今こそ読むべき内容だと思います。

おわりに

今回ご紹介した3名のエンジニアが人生を変えた一冊は、それぞれの専門分野や関心領域を反映した多様な選択でした。技術書との出会いは、単なる知識の獲得だけでなく、キャリアの方向性そのものをもたらしてくれるものです。

ファインディでは、さまざまなバックグラウンドを持つエンジニアが活躍しています。興味のある方は、ぜひこちらからチェックしてみてください!