こんにちは。
ファインディ株式会社でテックリードマネージャーをやらせてもらっている戸田です。
「AI活用を推進したいが、思うように進まない」──この悩みを抱えているエンジニアの方は、少なくないのではないでしょうか。
ファインディも例外ではありませんでした。2025年の上半期までは、普段の業務をやりつつ片手間でAIのキャッチアップや社内展開を進めていました。
今回は、そこから潮目が変わるきっかけとなった決断と、その後1人あたりのプルリクエスト作成数が前年比で約1.5倍になるまでの過程を紹介します。
同じようにAI活用の推進に手応えのなさを感じている方の参考になれば幸いです。
- 片手間で追いかける限界
- 1つの小さな決断
- 最初にやったこと:Findy Team+で現状を知る
- Claude Code Pluginsで展開を仕組み化する
- 継続的な浸透:毎日の通知と月一の共有
- 結果:PR作成数が前年比で約1.5倍に
- 振り返って気づいたこと
- まとめ
片手間で追いかける限界
2025年の上半期まで、ファインディの開発組織では興味と意欲のあるエンジニアが、普段のプロダクト開発と並行して、最新の動向をキャッチアップし、使えそうなツールを社内で共有していました。いわゆる"片手間"で進めるスタイルです。
最初のうちは、これでも回っていました。しかし、次第にこのやり方では追いつかなくなっていきました。
理由は単純で、AIのアップデートが多すぎたからです。
ほぼ毎日のようにアップデートが公開され、新しいエージェントや機能が登場する。上半期の半ばあたりから、キャッチアップに充てる時間がどうしても足りないという感覚が強くなっていきました。
努力で巻き返せるレベルの遅れではなく、物量的に両立が不可能な状態に近づいていました。
1つの小さな決断
この状況を動かすために取った1つの決断が、「AI推進だけを専任で担うポジションを作る」というものでした。
その人を普段のプロダクト開発業務から外し、AI推進そのものを業務にする。兼務で時間を増やすのではなく、業務から外して全振りするという発想への切り替えが、このポジションの本質です。
この判断の背景には、「全員が業務の10%をAI推進に充てるよりも、1人が100%を充てたほうが組織としての前進量は大きい」という確信がありました。
兼務スタイルで各自が少しずつ動く形では、日々のAIアップデートの速度には追いつかない。仮に追いついたとしても、それらを使ってアウトカムを出せるまでが遠すぎました。一方、1人が専任で全力でコミットできれば、情報の集約・検証・社内展開を最速のスピードで回せると判断しました。
AI推進ポジションのエンジニアの仕事は、AI活用と組織への展開そのもの。日々のプロダクト開発タスクは原則持たず、AI関連の動向調査・検証・社内展開・仕組み化に集中してもらう形にしました。
プロダクト開発の手を減らすことに対しては、当然ながら社内でも葛藤がありました。それでも踏み切れたのは、片手間で続けていた半年間を通して、兼務では絶対に追いつかないという確信があったからです。
最初にやったこと:Findy Team+で現状を知る
専任ポジションを置いてから最初に取り組んだのは、派手な施策やスキル作成などではなく現状把握でした。
組織全体のAI活用を推進するといっても、感覚だけで動くと認識のギャップが生まれます。そこで、Findy Team+を使ってチーム単位・メンバー単位でAI活用の度合いを可視化するところから始めました。
ここでわかったのは、想定していたよりAIの恩恵を受けられていない、という事実でした。
もう少し掘り下げると、チームや事業部ごとにAIの活用度合いに明確な差があり、同じ役割のエンジニアでも使っているスキル・エージェントにばらつきがあることが見えてきました。よく使えている人の工夫が、他のメンバーに自然には伝わっていない状態です。
組織として全員で底上げされているのではなく、一部の熱量の高いメンバーが先行している状態だった、というのが当時の姿でした。
Claude Code Pluginsで展開を仕組み化する
現状把握でわかったスキル・エージェントのばらつきを埋めるために選んだ打ち手が、Claude CodeのPlugins機能を使った社内展開です。
Plugins機能については以前の記事でも紹介しています。
Claude CodeのPluginsは、スキル・エージェント・カスタムコマンド・各種設定などを1つのパッケージとして配布できる仕組みです。AI推進のエンジニアが作成した開発用スキルなどをプラグインとしてインストール可能にしておけば、各メンバーが自分の環境でコマンド1つで使える状態になります。
この仕組みに乗せることで、便利なコマンドや開発標準化のスキルなどをそのまま開発組織全体に配布できるようになりました。新しく入ったメンバーも初日からファインディのAI活用の恩恵を受けられるようになっています。
実際に、ファインディの開発組織で運用しているスキル・エージェントの一部は、次の記事でも紹介しています。
いずれも個人の工夫として始まったものを、プラグイン化して全員に配布できる形にしたものです。
継続的な浸透:毎日の通知と月一の共有
プラグインを配布するところまで作っても、更新を知ってもらえなければ次第に忘れられてしまいます。そこでファインディでは、配布の仕組みに加えて、更新が自然と目に入る状態を保つ工夫を並行して走らせています。
1つ目は、プラグインの更新内容をSlackの専用チャンネルに毎日通知する仕組みです。新しく追加されたスキルや、アップデートされたコマンドが翌日には目に入る状態にしておくことで、いつの間にか変わっていたではなく、今日こんな機能が追加されたという鮮度で情報が流通します。
2つ目は、月一のエンジニア定例のなかに、プラグインやAI活用の使い方を共有する時間を設けたことです。ドキュメントだけでは掴みきれないニュアンスやちょっとしたコツを口頭で流す場として、思った以上に機能しています。
プラグインという土台に加えて、通知と定例という継続的な露出。この組み合わせが、AI活用を一部のメンバーだけで閉じさせず、組織全体に浸透させる力になっています。
結果:PR作成数が前年比で約1.5倍に
こうした取り組みを進めた結果、1人あたりのプルリクエスト作成数は前年比で約1.5倍になりました。
AI活用が進んだ実感というあいまいな言葉ではなく、開発のアウトプットそのものが定量的に伸びた、というのが大きなポイントです。
もちろん、プルリクエスト作成数は開発の速度やスタイルの指標の1つに過ぎません。それでも、組織としての変化が数字として見える状態になったこと自体が、AI活用のどこに投資すべきかを議論する大きな土台になりました。
振り返って気づいたこと
半年ほど取り組んで気づいたのは、専任を置いたから任せきる、では成り立たないということです。
専任1人ですべてを背負う構造にすると、その人自身がボトルネックとなってしまいます。専任の役割は、自分がすべてを実行することではなく、組織のAI活用を前に進めるための仕組みをつくること。
現場のエンジニア・マネージャーが自走するための土台を整え、みんなで良くしていくというスタンスが重要だと感じました。
まとめ
ファインディのAI活用推進は、特別なツールや大がかりな制度改革ではなく、「AI推進だけを専任で担うポジションを作る」というシンプルで小さな意思決定から加速しました。
そこから専任が取り組んだのは、Findy Team+を使った現状把握、Claude Code Pluginsを使ったスキル・エージェントの社内展開、そしてSlack通知と月一定例による継続的な浸透。
いずれも派手さはありませんが、これらの積み重ねによって、1人あたりのプルリクエスト作成数が前年比で約1.5倍になるまでの変化を生み出すことができました。
AI活用は一日にして成らず。小さな意思決定や地道な取り組みの積み重ねが、組織全体の大きな変化につながることを実感しています。
全員が10%ずつAI推進に充てるよりも、1人が100%を充てる。この発想の転換が、ファインディのAI活用を動かす原動力になっています。
AI活用が思うように進まないと感じている組織の責任者の方がいれば、制度や研修を考える前に、専任を置く(業務から外す)という選択肢を検討してみてください。
ファインディでは一緒に会社を盛り上げてくれるメンバーを募集中です。興味を持っていただいた方はこちらのページからご応募お願いします。








