RubyKaigi 2025 レポート: deprewriter-ruby で非推奨メソッドの置き換えを自動化!

こんにちは!ファインディ株式会社でエンジニアをしているみっきーです。 先日開催されたRubyKaigi 2025に参加しました。 去年はLTの登壇があり、準備で忙しかったので、今年はたくさんのRubyistと話したり、セッションを見られることをとても楽しみにしていました!! 今回は特に印象に残った「On-the-fly Suggestions of Rewriting Method Deprecations」というセッションについて紹介します。

自己紹介

私はFindy Team+でバックエンドエンジニアとして働いており、普段はRubyを使った開発をしています。 また、プライベートでは「omochi gem」というRuby gemを開発・メンテナンスしています。 そのため、今回のRubyKaigi 2025で「On-the-fly Suggestions of Rewriting Method Deprecations」というセッションを見つけたときは、すぐに興味を持ちました。非推奨メソッドの置き換えを自動化できるツールがあれば、ユーザーの移行をスムーズにサポートできると思ったからです。

deprewriter-ruby

deprewriter-ruby gemの紹介

「On-the-fly Suggestions of Rewriting Method Deprecations」セッションでは、ohbaryeさんが開発した「deprewriter-ruby」というgemが紹介されました。このgemは、非推奨になったメソッドの呼び出しを検出し、新しいメソッドへの置き換え方法を自動的に提案してくれるツールです。

deprewriter-rubyの特徴は次の通りです:

  1. 設定ファイルによる柔軟な定義: YAMLファイルで非推奨メソッドとその代替メソッドのマッピングを定義できます。
  2. インラインの提案: コードを実行すると、非推奨メソッドが使われている箇所で、代替メソッドへの置き換え方法が提案されます。
  3. 自動修正機能: 提案された変更を自動的に適用することも可能です。

このgemは、Rubyの標準的な警告メカニズムを拡張して、単に「このメソッドは非推奨です」と警告するだけでなく、「このメソッドは非推奨です。代わりにこのように書き換えてください」という具体的な提案をします。

speakerdeck.com

動かしてみた

セッション後、早速deprewriter-rubyを試してみました。

まず、次のようにインストールします

# Gemfile
gem "deprewriter", github: "ohbarye/deprewriter-ruby"

次に、ライブラリコードで非推奨メソッドとその代替メソッドを定義します

# Library code
require "deprewriter"

class Legacy
  def old_method(arg)
    puts "Using deprecated old_method with #{arg}"
  end

  def new_method(arg)
    puts "Using new_method with #{arg}"
  end

  extend Deprewriter
  deprewrite :old_method, to: 'new_method({{arguments}})'
end

そして、非推奨メソッドを含むコードを実行すると

# User code
legacy = Legacy.new
legacy.old_method("example argument")

環境変数を設定して実行することで、異なるモードで動作させることができます

# ログモード - 非推奨メソッドの警告と提案を表示
$ DEPREWRITER=log ruby your_script.rb

# 差分モード - 変更の差分を表示
$ DEPREWRITER=diff ruby your_script.rb

# 書き換えモード - 自動的にコードを書き換え(注意して使用してください)
$ DEPREWRITER=dangerously_rewrite ruby your_script.rb

ログモードでは次のような警告と提案が表示されます

$ DEPREWRITER=log bundle exec ruby user_code.rb
Calling deprecated method:
W, [2025-04-21T19:49:55.132998 #2137]  WARN -- : DEPREWRITER: Legacy#old_method usage at user_code.rb:9 is deprecated. You can apply the diff below to resolve the deprecation.
--- ./user_code.rb      2025-04-21 19:49:55.123740000 +0900
+++ ./user_code.rb      2025-04-21 19:49:55.123740000 +0900
@@ -6,7 +6,7 @@

 # Call the deprecated method
 puts "Calling deprecated method:"
-legacy.old_method("example argument")
+legacy.new_method("example argument")

 # The deprewriter will detect this call and show a warning
 # suggesting to use new_method instead

Using deprecated old_method with example argument

書き換えモードでは次のような警告と変更がおこなわれます。

$ DEPREWRITER=dangerously_rewrite bundle exec ruby user_code.rb
Calling deprecated method:
W, [2025-04-21T20:11:49.426183 #39447]  WARN -- : DEPREWRITER: Dangerously trying to rewrite. It will rewrite a file to apply the deprecation and load the file
Calling deprecated method:
Using new_method with example argument
Using deprecated old_method with example argument

$ git diff
diff --git a/user_code.rb b/user_code.rb
index d1a2a2b..bfcab60 100644
--- a/user_code.rb
+++ b/user_code.rb
@@ -6,4 +6,4 @@ legacy = Legacy.new

 # Call the deprecated method
 puts "Calling deprecated method:"
-legacy.old_method("example argument")
+legacy.new_method("example argument")

手元の環境でdemoを作成し、試してみました。 驚くほど簡単に非推奨メソッドの検出と提案が行われ、ユーザーがコードを更新する手間を大幅に削減できることを実感しました。

作者のohbaryeさんに聞いてみた

セッション後、ohbaryeさんに直接話を聞く機会がありました。セッションの内容だけでなく、ツール開発のきっかけや普段の情報収集の方法についても興味深いお話を伺うことができました。

ohbaryeさんはHacker Newsを定期的にチェックして、技術トレンドや面白いプロジェクトの情報を集めているそうです。 セッション内で紹介のあったPharoというプログラミング言語もHacker Newsで見かけたそうです。 また、PharoのDeprewriterに触れたきっかけで、deprewriter-rubyを作ったそうです。

「最近は日本語版もあるので、英語が苦手な方にもとっつきやすくなりました」と教えてくれました。さらに、情報収集の効率化について次のようなアドバイスもいただきました。

著名人や有名企業(Shopify、GitHubなど)のブログなど質の高い情報ソースはfeedlyというRSSリーダーを使って集めるようにしています。すべての未読記事を消化するのは大変なので、時間があるときに気になったものだけを読むようにしていますね。

このような効率的な情報収集の方法は、私も取り入れていきたいと思いました。 「必要だから作る」という実践的なアプローチにも共感し、自分のプロジェクトでも同じような姿勢で取り組んでいきたいと感じました。

ohbaryeさんに直接感想を伝えられたことで、オープンソースコミュニティの温かさも実感できた貴重な機会でした!

最後に

deprewriter-rubyは、Rubyの非推奨メソッドの置き換えを自動化するという、一見小さな問題に焦点を当てたgemですが、その影響は大きいと感じました。 非推奨メソッドの変更は避けられないものであり、ユーザーの移行をいかにスムーズにサポートするかは、ライブラリ開発者にとって重要な課題です。 day3のRuby Committers and the World内で、Matzも後方互換を大切にしている話をしていました。

x.com

現在のdeprewriter-rubyには、複雑なメソッド呼び出し(メタプログラミングなど)の書き換えができない、非推奨メソッドが呼び出されるたびに書き換え処理が実行されて効率が悪い、非標準のRubyライブラリに依存しているといった制限があります。 しかし、ohbaryeさんはこれらの課題に対して、より複雑なメソッド呼び出しへの対応、最初の呼び出し後の処理をスキップして最適化する、依存関係を減らしてスタンドアロン化するといった明確な改善計画を持っています。 このような継続的な改善への取り組みを見ると、今後さらに実用的なツールへと進化していくことが楽しみです!!

RubyKaigi 2025では他にも多くの興味深いセッションがありました。 Rubyコミュニティの活発な技術共有やライブラリやツール開発の文化に、改めて感謝の気持ちを抱いた3日間でした。

5/13(火)に、「After RubyKaigi 2025〜ZOZO、ファインディ、ピクシブ〜」として、ピクシブ株式会社、株式会社ZOZO、ファインディ株式会社の3社でRubyKaigi 2025の振り返りを行います。

オンライン・オフラインどちらもありLTやパネルディスカッションなどコンテンツが盛りだくさんなのでぜひご参加ください!!

ファインディでは、一緒に働く仲間を募集しています!! 興味を持っていただいた方はこちらのページからご応募お願いします。

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