「開発生産性」に関する実態調査レポート概説#4 AI時代の技術格差 ── Visual SourceSafe 15.8%が示す変革への壁

こんにちは。Findy Tech Blog編集長の高橋(@Taka-bow)です。

2012年にサポート終了したVisual SourceSafeが、いまだに利用率2位。この調査結果に私はとても驚きました。

前回の記事では、開発生産性を阻む「組織の3大課題」として、要件定義、会議、コミュニケーションの問題を取り上げました。今回は、それらと深く関わる技術環境の世代差と、AI時代における影響を考えます。

【調査概要】
  • 調査対象:ソフトウェア開発(組み込み開発を含む)に直接関わるエンジニア、プロダクトマネージャー、プロジェクトマネージャー、エンジニアリングマネージャー、開発責任者など
  • 調査方法:インターネット調査
  • 調査期間:2025年4月2日(水)~2025年5月21日(水)
  • 調査主体:ファインディ株式会社
  • 実査委託先:GMOリサーチ&AI株式会社
  • 有効回答数:798名(95%信頼区間±3.5%)
  • 統計的検定力:80%以上(中程度の効果量d=0.5を検出)
  • 調査内容:
    • 開発生産性に対する認識
    • 開発生産性に関する指標の活用状況
    • 開発生産性に関する取り組み
    • 開発環境・プロセス評価
    • 組織文化と生産性

ソースコード管理ツールの利用状況

意外と多かったVisual SourceSafe

今回の調査で、ソースコード管理ツールの利用状況を調べてみたのですが、私はVisual SourceSafeをアンケート回答の選択肢に入れるかどうか、最後まで悩みました。さすがにもう使われていないだろうと思い込んでいたからです。

それは、大きな間違いでした。

ソースコード管理ツールの利用状況

順位 ツール名 利用率 回答者数 備考
1位 GitHub 30.5% 243名 Gitベース
2位 Visual SourceSafe 15.8% 126名 2012年サポート終了
3位 Subversion 13.7% 109名 集中型VCS
4位 Azure DevOps (Repos) 8.4% 67名 Gitベース
5位 GitLab 8.0% 64名 Gitベース
6位 CVS 3.6% 29名 2008年開発終了
7位 TFVC 2.4% 19名 従来型
8位 Bitbucket 1.8% 14名 Gitベース
9位 Gitea 1.6% 13名 Gitベース
9位 SourceForge 1.6% 13名 ホスティング
11位 Perforce (Helix Core) 1.3% 10名 大規模向け
12位 Mercurial 0.4% 3名 分散型VCS
- その他 11.0% 88名 -

(N=798、単一回答)

GitHubが1位であることは予想通りでしたが、Visual SourceSafeが2位に入っていたのです。

Subversion(13.7%)、CVS(3.6%)を加えると、約3割の組織が従来型のバージョン管理システムを使用しています。

AI時代に広がるソースコード管理ツールの影響

AI開発支援ツールとGit連携

2023年以降、AI開発支援ツールが急速に普及しました。

GitHub Copilot、Cursor、Claude Code、Devin、Clineなど、いずれもGitベースのワークフローを前提に設計されています。そのため、従来型ツールの環境ではこれらのツールを十分に活用できません。

  • AIがコードベース全体を把握できず、提案の精度が下がる(リポジトリ連携機能)
  • 変更履歴や差分を活用したコード生成ができない(diff/commit統合)
  • コードレビューやタスク管理の自動化が使えない(PR自動作成、イシュー管理)

DevinやClineなどAIエージェント系ツールは、コード補完にとどまらず、プルリクエスト作成、コードレビュー、イシュー管理まで自動化します。これらはGitHub/GitLabのAPIを前提としているため、旧来のバージョン管理では活用できません。

このツール環境の差は、どのような影響をもたらすのでしょうか。

ツールの差がAI活用の差になる

GitHub社の調査によると、Copilot利用者は特定のタスク(HTTPサーバー実装)において、非利用者より55%速く完了したと報告されています。日常業務すべてで同じ効果が出るとは限りませんが、無視できない差です。

Visual SourceSafe(15.8%)とSubversion(13.7%)を合わせると約3割の組織が、こうしたAI開発支援ツールを十分に活用できない環境にあります。このようなツール環境の違いが、将来の生産性格差につながっていく可能性があります。

つまり、AI活用の有無が開発速度に影響する可能性があります。

CI/CDパイプラインへの低い満足度

次のグラフは、満足度が50%を下回った項目を抜粋したものです。

開発基盤の満足度(全7項目が50%未満、ワースト順)

項目 満足度
CI/CDパイプライン 14.2%
ドキュメンテーション 17.5%
タスク管理システム 18.2%
コードレビュープロセス 19.2%
開発環境整備 24.7%
チーム内意思決定 34.1%
チーム内コミュニケーション 37.1%

(N=798)

CI/CDパイプラインの満足度はわずか14.2%で、最も低い結果となりました。

この低さは、ソースコード管理ツールの選択と無関係ではないと思います。現在主流のCI/CDツールはGitベースのバージョン管理を前提としており、Visual SourceSafeやSubversionとシームレスに連携することが難しいからです。

なぜ従来型ツールから移行しないのか

従来型ツールを使い続ける組織には、それぞれの事情があると考えられます。

  • 基幹システムや業務システムとの連携が従来型ツール前提で構築されている
  • 過去の履歴データ、ワークフロー、ビルドスクリプト等の移行に膨大な工数がかかる
  • 長年使い続けたツールに習熟したメンバーが多く、再教育コストが高い
  • 「動いているものは触るな」という保守的な判断が優先される
  • ウォーターフォール型ではリリース頻度が低く、Gitベースのワークフローの恩恵を感じにくい

大規模組織ほど、これらの要因が重なり移行が難しくなります。

とはいえ、全面移行にはリスクが伴います。履歴データの損失、一時的な生産性低下、デリバリー遅延、メンバーの抵抗などです。一方で、現状維持にも見えないコストがあります。セキュリティリスクの増大、新しい技術との統合困難、採用市場での不利など、これらは時間とともに大きくなっていきます。

具体的な移行のロードマップは、最終回(第8回)で取り上げます。

開発プロセスの認識の課題

ソースコード管理ツールの選択は、組織の開発プロセスに対する認識とも関連しています。調査からは、開発プロセスの認識にも課題が見えてきます。

開発フレームワークの認識状況

開発フレームワーク 回答率 回答者数
ウォーターフォール 36.8% 294名
よくわからない 18.2% 145名
ウォーターフォールとアジャイルのハイブリッド 13.2% 105名
【アジャイル開発】決まったフレームワークはない 13.2% 105名
【アジャイル開発】スクラム 6.8% 54名
【アジャイル開発】XPのプロセス 3.8% 30名
【アジャイル開発】大規模スクラム:LeSS 2.4% 19名
【アジャイル開発】大規模スクラム:SAFe 1.3% 10名
【アジャイル開発】大規模スクラム:Nexus 1.3% 10名
【アジャイル開発】大規模スクラム:Scrum@Scale 0.8% 6名
【アジャイル開発】大規模スクラム:その他 0.8% 6名
リーン 0.4% 3名
カンバン 0.3% 2名
その他 1.0% 8名

(N=798)

なんと、約5人に1人(18.2%)が自分の組織がどんな開発フレームワークを使っているか「よくわからない」と回答しています。

開発フレームワークを十分に理解できていないということは、

  • なぜそのプロセスで開発しているのか
  • どのような改善が可能なのか
  • 自分の役割がプロセス全体のどこに位置するのか

こうしたことが把握しづらくなります。

この問題は、第3回で取り上げた「不明確な要件」の問題とも関連しています。開発プロセスが明文化・共有されていない組織では、要件定義も曖昧になりがちだと思われます。

まとめ

798名の調査から見えてきたのは、日本の開発現場における技術環境の世代差です。Visual SourceSafeが15.8%、Subversionが13.7%と、約3割の組織が従来型ツールを使い続けています。CI/CDパイプラインの満足度は14.2%にとどまり、18.2%は自組織の開発手法を「よくわからない」と答えました。

AI時代において、このツール環境の差はさらに広がっていくでしょう。最新のAI開発支援ツールはGitベースのワークフローを前提としているからです。ただし、ツールを入れ替えるだけでは解決しません。技術基盤の刷新と組織文化の変革、両方が必要です。

次回は「なぜDevExは日本で知られていないのか ── 認知度4.9%が語る未開拓領域」をお届けします。

  • 調査全体について
  • 開発手法による意識の違いの本質
  • 取り組みが失敗する本当の理由
第4回、AI時代の技術格差 ── Visual SourceSafe 15.8%が示す変革への壁
  • なぜ従来型ツールから移行できないのか
第5回、なぜDevExは日本で知られていないのか ── 認知度4.9%が語る未開拓領域
  • 日本の開発者が本当に求めているもの
第6回、なぜDORA指標は日本で普及しないのか ── 認知度4.3%の背景と打開策
  • 数値化への懸念と向き合う方法
第7回、生産性向上を阻む組織の壁 ── 37.8%が未着手の深刻な理由
  • 経営層を説得する具体的な方法
第8回、既存システムから次世代への変革 ── 日本の開発現場が立つ分岐点
  • 品質文化を強みに変える改革のロードマップ

お知らせ

Development Productivity Conference 2026」が2026年7月22日〜23日に開催されます。継続的デリバリー(CD)の先駆者であり『継続的デリバリーのソフトウェア工学』著者のDave Farley氏が初来日。日本からはテスト駆動開発の第一人者・和田卓人氏が登壇します。

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