こんにちは。Findy Tech Blog編集長の高橋(@Taka-bow)です。
2012年にサポート終了したVisual SourceSafeが、いまだに利用率2位。この調査結果に私はとても驚きました。
前回の記事では、開発生産性を阻む「組織の3大課題」として、要件定義、会議、コミュニケーションの問題を取り上げました。今回は、それらと深く関わる技術環境の世代差と、AI時代における影響を考えます。
ソースコード管理ツールの利用状況
意外と多かったVisual SourceSafe
今回の調査で、ソースコード管理ツールの利用状況を調べてみたのですが、私はVisual SourceSafeをアンケート回答の選択肢に入れるかどうか、最後まで悩みました。さすがにもう使われていないだろうと思い込んでいたからです。
それは、大きな間違いでした。

ソースコード管理ツールの利用状況
| 順位 | ツール名 | 利用率 | 回答者数 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 1位 | GitHub | 30.5% | 243名 | Gitベース |
| 2位 | Visual SourceSafe | 15.8% | 126名 | 2012年サポート終了 |
| 3位 | Subversion | 13.7% | 109名 | 集中型VCS |
| 4位 | Azure DevOps (Repos) | 8.4% | 67名 | Gitベース |
| 5位 | GitLab | 8.0% | 64名 | Gitベース |
| 6位 | CVS | 3.6% | 29名 | 2008年開発終了 |
| 7位 | TFVC | 2.4% | 19名 | 従来型 |
| 8位 | Bitbucket | 1.8% | 14名 | Gitベース |
| 9位 | Gitea | 1.6% | 13名 | Gitベース |
| 9位 | SourceForge | 1.6% | 13名 | ホスティング |
| 11位 | Perforce (Helix Core) | 1.3% | 10名 | 大規模向け |
| 12位 | Mercurial | 0.4% | 3名 | 分散型VCS |
| - | その他 | 11.0% | 88名 | - |
(N=798、単一回答)
GitHubが1位であることは予想通りでしたが、Visual SourceSafeが2位に入っていたのです。
Subversion(13.7%)、CVS(3.6%)を加えると、約3割の組織が従来型のバージョン管理システムを使用しています。
AI時代に広がるソースコード管理ツールの影響
AI開発支援ツールとGit連携
2023年以降、AI開発支援ツールが急速に普及しました。
GitHub Copilot、Cursor、Claude Code、Devin、Clineなど、いずれもGitベースのワークフローを前提に設計されています。そのため、従来型ツールの環境ではこれらのツールを十分に活用できません。
- AIがコードベース全体を把握できず、提案の精度が下がる(リポジトリ連携機能)
- 変更履歴や差分を活用したコード生成ができない(diff/commit統合)
- コードレビューやタスク管理の自動化が使えない(PR自動作成、イシュー管理)
DevinやClineなどAIエージェント系ツールは、コード補完にとどまらず、プルリクエスト作成、コードレビュー、イシュー管理まで自動化します。これらはGitHub/GitLabのAPIを前提としているため、旧来のバージョン管理では活用できません。
このツール環境の差は、どのような影響をもたらすのでしょうか。
ツールの差がAI活用の差になる
GitHub社の調査によると、Copilot利用者は特定のタスク(HTTPサーバー実装)において、非利用者より55%速く完了したと報告されています。日常業務すべてで同じ効果が出るとは限りませんが、無視できない差です。
Visual SourceSafe(15.8%)とSubversion(13.7%)を合わせると約3割の組織が、こうしたAI開発支援ツールを十分に活用できない環境にあります。このようなツール環境の違いが、将来の生産性格差につながっていく可能性があります。
つまり、AI活用の有無が開発速度に影響する可能性があります。
CI/CDパイプラインへの低い満足度
次のグラフは、満足度が50%を下回った項目を抜粋したものです。

開発基盤の満足度(全7項目が50%未満、ワースト順)
| 項目 | 満足度 |
|---|---|
| CI/CDパイプライン | 14.2% |
| ドキュメンテーション | 17.5% |
| タスク管理システム | 18.2% |
| コードレビュープロセス | 19.2% |
| 開発環境整備 | 24.7% |
| チーム内意思決定 | 34.1% |
| チーム内コミュニケーション | 37.1% |
(N=798)
CI/CDパイプラインの満足度はわずか14.2%で、最も低い結果となりました。
この低さは、ソースコード管理ツールの選択と無関係ではないと思います。現在主流のCI/CDツールはGitベースのバージョン管理を前提としており、Visual SourceSafeやSubversionとシームレスに連携することが難しいからです。
なぜ従来型ツールから移行しないのか
従来型ツールを使い続ける組織には、それぞれの事情があると考えられます。
- 基幹システムや業務システムとの連携が従来型ツール前提で構築されている
- 過去の履歴データ、ワークフロー、ビルドスクリプト等の移行に膨大な工数がかかる
- 長年使い続けたツールに習熟したメンバーが多く、再教育コストが高い
- 「動いているものは触るな」という保守的な判断が優先される
- ウォーターフォール型ではリリース頻度が低く、Gitベースのワークフローの恩恵を感じにくい
大規模組織ほど、これらの要因が重なり移行が難しくなります。
とはいえ、全面移行にはリスクが伴います。履歴データの損失、一時的な生産性低下、デリバリー遅延、メンバーの抵抗などです。一方で、現状維持にも見えないコストがあります。セキュリティリスクの増大、新しい技術との統合困難、採用市場での不利など、これらは時間とともに大きくなっていきます。
具体的な移行のロードマップは、最終回(第8回)で取り上げます。
開発プロセスの認識の課題
ソースコード管理ツールの選択は、組織の開発プロセスに対する認識とも関連しています。調査からは、開発プロセスの認識にも課題が見えてきます。

開発フレームワークの認識状況
| 開発フレームワーク | 回答率 | 回答者数 |
|---|---|---|
| ウォーターフォール | 36.8% | 294名 |
| よくわからない | 18.2% | 145名 |
| ウォーターフォールとアジャイルのハイブリッド | 13.2% | 105名 |
| 【アジャイル開発】決まったフレームワークはない | 13.2% | 105名 |
| 【アジャイル開発】スクラム | 6.8% | 54名 |
| 【アジャイル開発】XPのプロセス | 3.8% | 30名 |
| 【アジャイル開発】大規模スクラム:LeSS | 2.4% | 19名 |
| 【アジャイル開発】大規模スクラム:SAFe | 1.3% | 10名 |
| 【アジャイル開発】大規模スクラム:Nexus | 1.3% | 10名 |
| 【アジャイル開発】大規模スクラム:Scrum@Scale | 0.8% | 6名 |
| 【アジャイル開発】大規模スクラム:その他 | 0.8% | 6名 |
| リーン | 0.4% | 3名 |
| カンバン | 0.3% | 2名 |
| その他 | 1.0% | 8名 |
(N=798)
なんと、約5人に1人(18.2%)が自分の組織がどんな開発フレームワークを使っているか「よくわからない」と回答しています。
開発フレームワークを十分に理解できていないということは、
- なぜそのプロセスで開発しているのか
- どのような改善が可能なのか
- 自分の役割がプロセス全体のどこに位置するのか
こうしたことが把握しづらくなります。
この問題は、第3回で取り上げた「不明確な要件」の問題とも関連しています。開発プロセスが明文化・共有されていない組織では、要件定義も曖昧になりがちだと思われます。
まとめ
798名の調査から見えてきたのは、日本の開発現場における技術環境の世代差です。Visual SourceSafeが15.8%、Subversionが13.7%と、約3割の組織が従来型ツールを使い続けています。CI/CDパイプラインの満足度は14.2%にとどまり、18.2%は自組織の開発手法を「よくわからない」と答えました。
AI時代において、このツール環境の差はさらに広がっていくでしょう。最新のAI開発支援ツールはGitベースのワークフローを前提としているからです。ただし、ツールを入れ替えるだけでは解決しません。技術基盤の刷新と組織文化の変革、両方が必要です。
次回は「なぜDevExは日本で知られていないのか ── 認知度4.9%が語る未開拓領域」をお届けします。
- 調査全体について
- 開発手法による意識の違いの本質
- 取り組みが失敗する本当の理由
- なぜ従来型ツールから移行できないのか
- 日本の開発者が本当に求めているもの
- 数値化への懸念と向き合う方法
- 経営層を説得する具体的な方法
- 品質文化を強みに変える改革のロードマップ
お知らせ
「Development Productivity Conference 2026」が2026年7月22日〜23日に開催されます。継続的デリバリー(CD)の先駆者であり『継続的デリバリーのソフトウェア工学』著者のDave Farley氏が初来日。日本からはテスト駆動開発の第一人者・和田卓人氏が登壇します。
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